マウンティングについて

最近よく「マウンティング」と言う言葉を頻繁に耳にする。
マウンティングとは本来動物が自分の優位性を表すために相手に対して馬乗りになる様子を言うが、昨今ハラスメント関連で良く耳にするソレは「言葉や行動により、相手より優位に立ち、支配しようとすること」であり、自己の優位性を確立する為に立場や知識を元に意見を主張し、更に優秀アピールをする行為らしい。
会社では態々ネーミングしなくても日常茶飯事過ぎてこれが問題行為であるかを考えた事も無かったのだが…。
今回はこの難解な「マウンティング」について考えてみたい。
どこからがマウンティング?
組織体の中で仕事をする上で欠かせないのが関係者とのコミュニケーションだ。
どんな職業であっても打合せや会議、報告連絡相談、軽いミーティングなど、頻度のさはあれど様々なシーンで関係各位と会話する事で意思決定や調整を行い仕事は進んで行く。
そういった仕事上のコミュニケーションでは自分の意見を率直に述べ、時には戦う事もある。
例えば、あるプロジェクトの会議でどうしても引けない要望がある場合、自身の置かれた立場や経験則、又は実績や能力に基づいて、つまり根拠を示して意見を出すだろう。
当然これはマウンティングには当たらない。
会社にとって重要なプロジェクトを扱う会議は通常複数人が参加するが、そんな中で何の根拠もない思いつきだけの意見で皆の時間を無駄に費やす訳にはいかない。意思決定には参加メンバー全員の責任も伴う。意見を述べるのなら最低限論拠は示すべきだ。
考えるに、この先からマウンティングになるかならないかの線引きがある。
キーワードは【支配】と【場面】
マウントを取りに来る人の特徴の一つとして、「排他的」であると言う事が挙げられる。自分の意見以外は認めない。自分の意思のみで物事を進めたい。だから他者の要望や意見より先ず自分を優先して扱って欲しい。
故に自分の発言、意見を持って関係者や集合体を支配しようとする。
反対意見には謝辞や検討ではなく論破で応戦する。若しくは反対意見を出した者に対し自分を論破する事を求める。
いよいよ応戦に苦慮すると、根拠の無い感覚だけの意見及び立場(職制や社歴、経験年数や収入金額など)を持ち出し、相手の論破攻撃を防ごうとする。
「俺を誰だと思ってるんだ!」「誰が言ってると思ってるんだ!」等はマウントを取る際の代表的な言動だろう。
こうなるとマトモな議論は出来ない。
集合知を産み出す道は永遠に閉ざされ、独りよがりの思考に基づいた凡庸なアウトプットしか生み出せない人々の集合体になり果てる。
このような事例は【積極支配型】と呼べるであろう。
また逆に、どんな意見に対しても「否定」を投げつける事で優位性を担保しようとする場合もある。
私のNOを論破できるのならやってみろとばかりに、全ての意見や行動にNOを表示する事によって自身の安全な立場を確保しようとする。
こと仕事に於いては経験のない案件や企画立案を遂行する事は多い。未知のリスクが大量に潜んでいる。だからといって遂行しないわけにはいかない。
この場合、勿論リスクを想定することは非常に大事な作業だが、すべてのリスクを想定することは出来ない。パーフェクトに一つの不具合もなく物事を遂行することは誰にも出来ない。
しかし、「否定」派はこれにもNOを突き付ける。自身の立場や経験を盾にリスクは全て洗い出し、対応策を練った上で遂行すべきだと主張する。安全安心の代表として玉虫色の答えしか受け付けないのだ。
そして何か不具合が発生した際に、彼らは決まってこう言う。
「だから言ったじゃないか。私の言う事を聞いていればこんな事にはならなかったのに。」
こうなると建設的な話し合いは出来ない。一人の容赦ないNOのお陰で意見を出す者は居なくなり、結果として凡庸なアウトプットしか生み出せない人々の集合体になり果てる。上司がこのタイプだと、部下は相当苦労するだろう。
このような事例は【消極否定型】と呼べる。
挙げれば切りがないが、凡そ上記のようにマウンティングは立場の上下関係が存在する場合においてネガティブな思考の下、発生する事が多いと思われる。つまり、
① 不適切な場面で
② 関係者(の何か)を支配するために
③ 立場や経験を用いて
④ 優位性を確保する
という要件が揃った所で「マウンテイング」であると評価できるだろう。
令和元年6月にパワーハラスメント対策が法制化された。これに伴い厚労省はパワハラに基づく労災認定のあり方の検討を始め、現在労災認定に用いている「業務による心理的負荷評価表」に、新たにパワハラを追加して令和3年度以降の認定基準改定を計画している。
ともすればマウンティングはパワハラとして評価され、労働災害として認定される日が来るかもしれない。
マウンティングへの対策
事実を事実として延べ、意見の優位性を示す事は仕事上でも必要な行為であるし、トップダウンの業務命令などは雇用といった支配従属関係があって初めて機能する。
然しながら、そういった必要がない場面での支配・従属関係の強要や示唆は邪魔なだけでなく成果にも多大な悪影響を及ぼす。
あからさまなマウンティングに対しては「無視」「適当に流す」等の対処法が他のサイトにて紹介されているが…果たしてこれが良い結果を生むだろうか。
会社で上司の言う事を「無視」したり「適当に流す」事が出来るのであれば、様々な労働問題は一挙に解決できる。しかし大部分に於いてこのような対処法は取れないのではないだろうか。
マウントを取ろうとする人間の立場が自分より上だった場合、最早対処は不可能である。
そうであるならば、仕事におけるマウンティング対応策有はただ一つ。
上の立場の者がマウンティングをしない事だ。
社会に入り年数と共に知見を蓄え、或いはマネージャーとしての実力を認められた者達は須く自身の言動に注意を払うべきだ。命令と指導や検討を同じテーブルで考えてはならない。
チームを率いる立場の者には、先ず目的を設定しメンバーに説明、説得する義務がある。
設定した目標をチームで達成する為に議論し、調整し、全体をまとめていかなければならない。これに必要なものは支配ではなく協力だ。
単純な事だが、ここを間違えなければマウンティングといった滑稽な言動は起こらない。
目的達成の為には何が必要なのか。
重大なリスクを孕むマウント行為。
上席である諸兄は今一度基本に立ち返り、自身の言動を見直してみてはいかがだろうか。