「発表」の心構え①
先日、従業員研修の一環として、新人社員数名にテーマを設定して簡単な社内プレゼンを行ってもらった。
我が社は途中入社が多い。
”新人”といっても年齢バラバラ、前職での経験値もバラバラなので、人前で発表するスキルも各々異なる。声の大小や間の取り方、しゃべる速度や目線の動き、等々…。
私もほんの2年前までは営業職で、大小様々なコンペティションに参加し、プレゼンターを経験した。様々な競合を下し勝利したことは、今でもチームメイト内では最高の酒の肴である。
そんな経験を基に研修の最後で気になった点や企画のまとめ方等のアドバイスを行うのであるが、実際のところ今回は皆優秀だったので技術的に大したアドバイスは出来なかった(する必要がなかった)。
ただ、いくつかの「心構え」は伝えさせてもらった。
本稿では自身の経験も踏まえ、複数人が参加する会議やプレゼンで発表する時の「心構え」について2回に分けて整理し、考えてみる。
(今更ながら)プレゼンテーションとは
言わずもがな、プレゼンとは売り込みたいテーマや商品、企画案について、効果的に説得するための技法のことである。
プレゼンを成功させるためには、前提として商品や企画案が魅力的なものでなくてはならない。なので本当に呻吟しなければならないのは”アウトプット”であるが、苦心して生み出したアウトプットを関係者により良く理解してもらうためには”あと一歩”の努力が必要になる。
それがプレゼンテーション技法であり、これは立派な技術だ。
技術である以上、個人の努力や工夫次第でかなりのレベルまで熟達させることが出来る。
そしてまた、技術である以上生まれながらに「プレゼンが上手い」人間は存在しない。喋るのが上手い=プレゼンが上手い、とはならない。
人前で話をするのが苦手という人は多いが、成長スピードの差はあれ、そういった人でも必ず上達する。
苦手意識を以て”伝える技術”を身に付けない場合、様々なシーンで、特に職場などでは”損”をする事になる。基本的に無料で身に付ける事ができる費用対効果が非常に高い技術なので、身に付けないと勿体ない。
例えば職場でのミーティングの風景を思い出してほしい。
今の机の配置を変えたい、暖房の温度を少し下げてほしい、等の個人的な要望があったとする。
この要望には対抗勢力があると仮定して、自分の意見を職場の権限者に聞き入れてほしい場合、自分の意見と対抗勢力の意見を権限者の前で戦わせなければならない。
権限者はより説得力があり、納得できる意見を採用する。
「机の配置が気に入らないので変えて下さい。あと、暖房暑すぎるんですけど。」
と単に伝えた場合、どうだろうか。
もちろん結果は見えている。職場は自分のプライベートスペースではない。共同作業の場である以上、あなたの個人的な意見は通らない。
では、同じ内容の事を伝えるのに、
- 立って話す
- 全員の目を順繰りに見ながら訴える
- 「前置き(課題)」「要望(施策)」「変化後(結果)」で話を構成する
上記のような動作や手順を踏めば、同じ内容でも「重要な事」のように取ってもらえたり、説得力が増すのではないだろうか。
(勿論、正当な理由や根拠がない意見ではいくらプレゼン技術があろうと反対される。ワガママや邪な意見を通す為の技術ではない。)
「伝える」技術とは
私が今の会社に就職したての頃、途中入社でありながら人前で喋った事と言えば学級内の発表くらいのもので、恥ずかしくも「会議」「ミーティング」等オフィシャルな場で複数人を前にして喋った経験が全く無かった。
顧客の前であれ業者さんとの打ち合わせであれ、私の話はシドロモドロで要点を得ず、ロクに戦力にもなれないのが大変歯がゆく、情けない思いをしていた事を今でも鮮明に覚えている。
入社1年を過ぎた頃、職務内容と技術的な基本事項は大体理解出来るようになっていたが、相変わらず人前で喋る事は苦手で、ただの苦痛でしかなかった。
この状況を打破する為に業界では有名な某「プレゼンテーション実習講座」の参加を決めた。
講座に参加する者は皆プレゼンが苦手だろうから自分でも大丈夫だとタカをくくって参加したが、これが中々の猛者(当時はそう見えた)揃いで、「自分、人前で喋るの苦手なもんで…」なんて言っている隙も無かった。
講座の内容としては、
- 前半:プレゼンテーション技法について座学で学ぶ(約1か月)
- 後半:全体30名の参加者を5人1チームに編成し、全チーム共通の課題に対して各チーム2週間で企画を考え、企画書を作成する
- 5人で役割分担し、参加者と講師の前でプレゼンテーションを行う
- 参加者と講師全員でプレゼンのダメ出しを行う
といった内容だった。
役割分担としては企画資料の作成やタイムキーパー、チームリーダー等があったが、私はくじ引きで「プレゼンター」担当となってしまった。
並み居る猛者共の前で、猛者共(チームメイト)が作った企画を発表する「プレゼンター」…しかもダメ出し総攻撃が待っている…噂では本当に容赦が無いらしい…。
決まった瞬間は吐き気がしたし、実際帰り道に吐いた。
選りによって…とも思ったが、そもそもプレゼン技法を学ぶのが講座に参加した目的なので、プレゼンター経験は最も”美味しい”役割である。
もうやるしかないと腹を括り、前日は寝ずにプレゼンの練習をし、企画書が見えなくなる位にメモを記入し、実践に挑んだ。
(「発表」の心構え②に続く)