ミドリ草BLOG

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擦り切れそうな人間関係摩擦と経営者のワガママ暴言に辟易としつつ自己嫌悪と闘いながら今日も自立を夢見て

【集団浅慮】という見えない壁について

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営業時代、よく企画会議を開いてチームメンバーと意見を戦わせた。

 

コンペ案件では先ず売上規模や顧客の特性に応じて社内外から各種スタッフをアサインし、5~20名程度のプロジェクトチームを作る。

当社では原則として作ったチームの一部がプレゼンに勝利した後も存続し、引き続き業務にあたる事としている。自分たちで立てた企画案に責任を持たせ、また業務を遂行する上での”作ったときの想い”を重視しているからだ。

これはつまり長く一緒に仕事が出来る人材をアサインし、チームを作らなければならないという事になる。

コストを始めスタッフ各々の技量や仕事の仕方の特徴、リーダーに従う度合いを鑑みながらメンバー選定するのだが、これを誤ると、仮にコンペに勝利し仕事を勝ち得たとしても、すぐさま失注する危険性が高くなる。

金額が大きい仕事ともなればメンバー選定も慎重にならざるを得ない。然るに選定の段階から「上席」管理職をメンバーに組み入れる事になる。

こうして出来上がったチームの中では誰の発言が一番 ”重み” を持つだろうか。また、誰のどのような発言に重みをつけなければならないだろうか。

”発言の重み=役職の重み” という構図によって意思決定が為されてしまう事が起こってはいないだろうか。

 

目的を欠いた会議は害にしかならない

 

以前、記事の中で取り上げた「組織論 再入門」の中では「集団浅慮(グループシンク)」として集団による意思決定の4つのミスが指摘されている。

 

①同調行動

 集団で意思決定をする際に、必ずしも真剣に考えて個人的に正しいと思った意思決定をしていない状態。

マジョリティに斉一化され流されてしまうという現象。

事態の重要性を認識させると(自分事化させると)いい加減な同調行動が起きにくくなる。更に、透明性を確保する(挙手ではなく秘密投票にする等)と同調行動が避けられる。

 

②少数者の過剰な影響

振る舞い方や発言力によってパワーを得た少数派が徹底的に主張を繰り返して行うと、大多数派のあまりよく考えていない人間がどんどん付和雷同して増加し、同調行為も相まって集団としてある種の思考停止状態に陥る現象。デマゴーグなどが良い例。

 

③リスキーシフト(分極化)

2つの対立する意見があると、より危険度の高い方、ハイリスクなほうに一気に意思決定が傾く傾向の事。

「大丈夫であります!勝てるか勝てないかではなく、勝つのであります!」なんて言われると安易に「そうだ!」となる傾向を指す。

 

④過度な役割行動

自分自身はそんな事は思っていない、本当は自分の意見は正反対であったとしても、自分に与えられた役割や立場からすれば ”そういう発言をしなければならない” という自己規定に基づいて意思決定をしてしまう事。

明確に規定された役割を特定の人間がずっとこなしていると、その役割に沿った判断、言動しか出来なくなる。

 

(詳しくは「組織論 再入門:野田稔」をご拝読ください)

 

先例の会議等では役職が上位である者の発言が重要視されがちである。周りの参加者が上席の発言に”重みをつける”のだ。

役職の高い人間は通例、在社歴が古く経験値が多い社員である。

「なるほど、あの人が言うんやったら間違いないやろ」と、経験の浅い者が経験豊かな上席の意見に従う時、経験の浅い者の思考は停止している。

「そないしたらエエんちゃう?責任取るん私ちゃうし」と、上席の者に責任を転嫁する者も同様である。

 

思考を停止させ、役職の序列に則って上席の人間に従う者がマジョリティとなった時、同調行為は加速される。

この現象は別に上席の人間が参加していなくても、例えば会議の中で”声の大きい者”に同調する場合も同様である。

先の記事で「伝える技術」を取り上げたが、プレゼンテーションが上手な者は、この同調行為を利用して結果をコントロールする(良いか悪いかは内容による)。恣意的な結果に導こうとする場合は正に ”少数者の過剰な影響” だ。

 

(詳しくはコチラ)

 

集団で意思決定する目的が「合議」であるなら、素早い合意形成を図るのに同調行動や発言者の影響行動が役に立つ。

しかし、目的が「良い企画、勝てる企画を作る」である場合や「みんなが困っている課題を解決する方法」を考える場合に於いては同調行為や少数者の過剰な影響行為は邪魔、というより害になる可能性が高い。時間をかけて漸く意思決定出来たとして、参加者が思考停止して出した結果によって、果たして ”本当の目的” は達成されるだろうか。

 

こういった問題は組織で働く我々にとっては避けて通れない「壁」である。

 

 「壁」を超えるには「工夫」を

 

 こういった問題に対処するには、目的に応じて話し合いの形態を工夫する必要がある。

目的に応じて会議のルール・やり方を決め、これを徹底する事で「壁」を突破できる。

 

例えばアイデアラッシュを目的として会議をする場合等では以下のようにルールを決め、冒頭で必ず全員に伝える。

  • 絶対発言
  • 批判、否定の類はNG
  • 他人の意見に乗っかる

有名なブレーンストーミングだ。ここでは上席であろうが発言力があろうが関係ない。

但し、こういった決め事をしていても上席や経験豊富な先輩は批判や否定発言をしがちだ。

そういった場合、一言でもネガティブが出たらその会議は即座に終了し、ネガを吐いた人を排除して新たに会議をスタートした方が全員の時間が無駄にならずに済む。ブレストはルール遵守より ”終了→バカ排除で再開” を徹底する方が重要だ。

 

他にも企画等「誰かに提案したい内容を複数人で検討」する場合には、会議の前に企画書/提案書面をメンバーに配布しておき、会議当日までに意見を紙に書いて持ってくるよう指示を出しておく。

会議では各々紙に書いた意見を読み上げるのみ。

こうすれば上席や経験豊富な先輩の発言で自分の意見を変えることが無くなり、思考停止による同調を未然に防ぐことが出来る(実際私はこの方法を良く使う)。

また、全員がフラットな意見を発表する事で、何が多数派を占めるのか、少数意見には検討する余地がないのかを後程冷静に検討する事が出来るようにもなる。

 

その他にも有用な会議の方法は世の中に沢山ある。

 

専門的な勉強をせずとも、ネット検索でいくらでも見つかる。たまにはレクリエーションのような”楽しい会議”があってもいいかもしれない。

いつも通りにただ集まって、なんとなく会話して何となく落とし所が決まっていく会議は時間の浪費でしかない。浪費であるなら会議はしない方が全員にとって有難い。

 

会議は参加者のストレス値が上がれば上がる程、思考が順次止まっていく。そうなるともうリカバリーできない。特に長時間に及ぶ会議では顕著にストレス値が上がる。そうして無理に出した結果には何の意味もない事を知っていれば、参加したメンバーは無駄な時間を消費せずに済む。

 

ちょっとした工夫でこういった「無駄の壁」を超えられるのだから、色々試して損はない。